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【注目情報】革新的医薬品イニシアティブ(IMI): ビッグファーマを利する官民パートナーシップが実態

原文

The Innovative Medicines Initiative: a European public-private partnership that mostly benefits Big Pharma" Prescrire International 2022; 31 (236): 108-111.

https://english.prescrire.org/en/81/168/64268/0/NewsDetails.aspx

要旨

欧州委員会と欧州製薬企業連合(EFPIA)は、2007年、官民パートナーシップとして革新的医薬品イニシアティブ(IMI)を設立した。公式な目的は、医薬品開発過程を改善し、製薬部門 (sector) が長期にわたってより安全で有効な新薬を作り出せるようにすることであった。IMIは 20 億ユーロ以上の公的資金を受けている。

IMIの実態は、不透明な一方向のパートナーシップである。製薬企業は IMI を規制官庁と患者に対するロビー活動に利用し、かれら自身の利益に有利なルールを形づくった。

IMIは、大企業に有利なメカニズムが根底にあり、優先順位の選択、戦略的研究課題、さらには年間作業計画さえも管理した。企業に利益をもたらさないものにはほとんど資金援助されず、IMIの優先順位と公的医療の優先順位は一致していない。最大の勝利者は巨大企業である。

当会議コメント

世界的にも評価の高い医薬品情報誌であるプレスクリル誌は、IMIに関する批判を、保健医療を専門とする2つのNGO が作成した報告書に基づいて上記のとおり紹介している。

欧州製薬団体連合会JAPAN1によれば、IMIの特徴は、

・官民による1:1の資金拠出、共同の意思決定 

・EUからの全ての資金はベンチャーなど中小企業やアカデミア、患者団体、規制当局に拠出される 

・EFPIA加盟の製薬会社は資金を受け取らず、現物出資を行う

とされている。

 しかし、2つのNGOは、IMIはWHOや欧州委員会の提案事項を認めようとせず、中小企業のプロジェクトへの参加も少なく一貫して減少しているとし、公共部門には責務を課し民間部門にのみ特権と利益を生み出すこの種のパートナーシップが今後のプログラムで再現されないことを希望すると述べている。

 医薬品の開発過程を改善するというのであれば、少なくとも大企業が拠出し、官主導でベンチャーなど中小企業やアカデミア、患者等が対等に参加するシステムを構築することを望みたい。(N.M) 

参考文献等

1)https://plaza.umin.ac.jp/tri-u-tokyo/ja/symposium/201601/pdf/document04.pdf