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【注目情報】メタ解析の結果、臨床試験の3割が早期中止され、結果の2割が発表されていなかった

原文

Nonregistration, discontinuation, and nonpublication of randomized trials: A repeated metaresearch analysisランダム化試験の非登録、中断、非出版: 繰り返し行ったメタ研究分析

https://journals.plos.org/plosmedicine/article?id=10.1371/journal.pmed.1003980(Published : April 27, 2022)

要旨

臨床試験登録についての論文である。2012年にイギリス、スイス、カナダ、ドイツの研究倫理委員会で承認された326件のランダム化比較試験(RCT)について、10年前の同様の分析結果と比較した。

早期中止の割合は10年前よりも減っていない(25%→30%)。そのうち37%(36件/98件)が試験参加者の少なさによるものだった。

倫理委員会を通過したのに論文として発表されていないものは44%から21%(70件)に減った。しかし、発表されなかった臨床試験のうち2割(19件)はWHOや米国、欧州などの公機関が運営する臨床試験情報データベースへの登録すらされていなかった。

臨床試験として登録された後に結果を報告している割合は、医師主導の臨床試験では16%で、これは企業がスポンサーとなった臨床試験が84%であることに比べて低い。プロトコールの報告品質が結果の公表と関係していた。

当会議コメント

臨床試験を事前に登録することは、出版バイアス(否定的な結果が出た研究は、肯定的な結果が出た研究に比べて公表されにくいというバイアス)を抑止するために重要である。一方で、早期中止、未発表は研究の無駄でもある。本研究は、スイス、イギリス、ドイツ、カナダ倫理委員会で承認されたRCTのすべてのプロトコールに完全にアクセスできたことでなしえたものだ。10件に1件は事後登録であり、医師主導臨床試験のうち臨床試験登録で研究結果を利用できるようにしたものはほとんどないという。臨床試験登録に結果が掲載されたものの方が、スピン(※1)が回避できる点で論文発表よりもすぐれていると著者らは指摘する。

各ジャーナルが投稿規定として事前の臨床試験登録と結果報告を義務づけるのは手立ての一つかもしれないけれども、出版バイアスの解決にはならない。思わしくない結果も結果であることについての意識改革が必要である。

そして、試験参加者の不足による早期中止を減らすには、研究計画の段階でより吟味することが必要ではないだろうか。(N)

参考文献等

※1 ランダム化比較試験の結果は論文でいかに歪めて伝えられるか | 薬害オンブズパースン会議 Medwatcher Japan (yakugai.gr.jp)

※2 欧州の大学の17%しか臨床試験結果を規定の12か月以内に報告していない | 薬害オンブズパースン会議 Medwatcher Japan (yakugai.gr.jp)