薬害オンブズパースン会議

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【注目情報】英国が医療・福祉分野のすべての研究での患者と市民の利益を守る透明性強化手段を示す ―EU も用いる手段は異なるが同様の透明性強化に動く

 

英国は、スポンサーが試験の透明性の期待にどのように取り組んでいるかを明らかにする

Pink Sheet 2021年12月7日

UK To Reveal How Sponsors Are Performing On Trial Transparency Expectations

Pink Sheet NEWS, 07 Dec 2021

要旨

英国保健研究庁 (HRA、※1)は、臨床試験スポンサー(臨床試験を実施する企業または機関)が、研究結果の公表、研究参加者に対する結果の通知、研究結果の一般向け要約の掲載など、報告しなければならないとされている事項についてどの程度実績を上げているかを監視し発表する。これらの遵守は、現在のところ英国では法律上の要件ではないが、HRAはその「期待」に応えられないスポンサーを名指しで非難し、年次報告書で公表すると警告している。

英国とは対照的にEUでは臨床試験の登録と結果の報告についての透明性要求事項は今後臨床試験規則で法的に規定される。しかし実務レベルでは、両地域の状況は同じと言える。

当会議コメント

臨床試験の透明性で重要なのは登録と公開である。HRA は、2022年1月から、研究用医療製品のすべての臨床試験を世界保健機関 (WHO) が認定した英国の臨床試験登録ステム( ISRCTN)に自動的に登録する。試験がISRCTNに登録されるとわかりやすい研究の要約と公開タイトルが英語で掲載され、結果の継続的な報告と公開が求められる。試験が完了した場合、研究結果の一般向け要約へのリンクなどが追加される。(※2)

WHOは2017年11月に臨床試験の登録項目(WHO TRDS)を改訂し、臨床試験の結果の要約や臨床試験参加者レベルのデータ(individual participant data: IPD)共有計画など4項目が追加された.日本でも、臨床研究データベース(Japan Registry of Clinical Trials: jRCT)が2018年12月にはWHOの承認を受け臨床試験の結果に関する新規 4 項目への追加の対応を完了している.(※3)

 このように、国内外で臨床試験の登録と公開による透明性強化が進められているが、透明性を担保するには、試験の進捗状況や完了した場合の結果の公開など、登録情報の更新が確実に行われる必要がある。HRAは英国内のすべての研究倫理委員会を管轄しているなど独自の立場で臨床試験を監視できる。日本にもHRAのような公的監視機関が必要であり、現在、このような監視システムが全世界的に必要とされているのが新型コロナウイルス(COVID-19)を対象とした臨床試験である。特にIPDの共有(公開)が進むことが重要である。(G.M)

参考文献等

※1 HRA

英国保健研究庁Health Research Authority (HRA)

医療・福祉分野における患者と市民の利益を守るよう創設、英国国民医療サービス NHS の構成団体の 1 つで、英国内のすべての研究倫理委員会を管轄する。

参考サイト HRA : https://www.hra.nhs.uk

※2

英国が臨床試験の100%登録のために「自動登録」を実施、透明性を高める

 ピンクシート2021年10月20日 

UK To Up Transparency By ‘Auto Registering’ Trials

Pink Sheet NEWS, 20 Oct 2021

※3

国際臨床試験(研究)登録プラットフォームにおける登録項目

WHO-ICTRPの動向

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jniph/69/3/69_234/_pdf/-char/ja