薬害オンブズパースン会議

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【注目情報】米国FDAが承認し他国で使用または保険償還が推奨されなかった医薬品の評価

原文

Assessment of FDA-approved drugs not recommended for use or reimbursement in other 24 countries, 2017-2020

2017-2020年にFDA承認されたが他国24カ国で使用または償還が推奨されていない医薬品に関する評価

JAMA Intern Med 2023; 27 doi: 10.1001/jamainternmed.2022.6787 Published online February 13.2023.

要旨

 2017~2020年にFDAが販売承認した新薬について、2022年5月31日の時点でオーストラリア、カナダ、イギリスの医薬品規制当局や医療技術評価機関が公表した審査概要報告書をもとに横断的研究を行った。

 この期間にFDAは206の新薬を承認した。一方、上記3カ国では、そのうち5品目がリスクベネフィットバランスの悪さから販売承認を拒否され、42品目は臨床上の有用性が不明確または許容できない高価格、またはその両方により、保険償還が推奨されなかった。これらを足した47薬品の米国でのコスト(中央値)は、患者ひとりあたり年間115,281ドル(1$=131円として約1,510万円)であった。また、20品目は抗腫瘍薬で、32品目が迅速承認やオーファンドラッグ法による承認であった。これら国際市場における低評価の薬品は、米国の医療専門家や医療制度によって精査される必要があるだろう。

当会議コメント

 上記3カ国で承認拒否又は保健償還が許されなかった47薬品について、我が国での承認状況を見てみたところ、申請中や治験中であるものも多かったが、不承認とされたものは見つからなかった。また、上記3カ国で承認拒否となった5品目のうち、アバロパラチド(オスタバロ®;骨粗鬆症治療薬)はFDA承認の4年後に承認されており、イストラデフィリン(ノウリアスト®;パーキンソン治療薬)については日本で先に承認された薬品である。臨床効果が不明確または費用対効果が悪いとされた42薬品についても、その半数の22薬品が承認されていた。

 PMDAにおいて、品質、有効性、安全性について現在の科学技術水準に基づき承認審査を行うという本来業務よりも、承認申請資料などに関する「相談業務」に始まり、企業と一体となった通すための申請書類作成に重きが置かれ、申請資料の倫理的・科学的信頼性を調査する役割は置き去りにされていると思わざるを得ない。特に新型コロナパンデミック以降は、緊急承認の拡大解釈や、承認ありきの「審査」が横行し、他国での使用が取り消しになっても使い続けているものもある。「立ち止まる」「検証」という言葉はこの国の辞書にはないのだろうか。(N)