医薬品等行政評価・監視委員会でHPVワクチンキャッチアップ接種キャンペーンが議題に
2024年9月20日に行われた医薬品等行政評価・監視委員会(以下「監視委員会」)で、当会議が厚労省に要請した「駆け込み接種を煽るHPVワクチンキャッチアップ接種キャンペーン」の問題が議題として取り上げられました。
この監視委員会は医薬品行政を第三者的立場から監視する委員会で、薬害肝炎訴訟の教訓をもとに設置されました。
東京産婦人科医会と富山県医師会のポスターが問題に
この日の監視委員会では、当会議の「駆け込み接種を煽るHPVワクチンキャッチアップ接種キャンペーンの即時中止を求める要請書」が参考資料として配布されたうえで、
- 東京産婦人科医会のポスターの「いま、若い世代の子宮頸がんが増えているんだって!」 という記載が虚偽であること(※40歳未満の子宮頸がんはワクチン接種に関係なく減っています。当会議のブログ参照)や
- 富山県医師会のポスター・リーフレットの「10/1以降は最大10万円、マジで自腹になっちゃうよ!」「このままだと6,620人が子宮頸がんで死んじゃう!」という表現の不当さなどが議論になりました。
厚労省の驚きの答弁
医薬品の広告は、薬機法という法律で規制されており、虚偽・誇大な表現は禁じられています。泉祐子委員からの薬機法の広告規制に違反するのではないかとの指摘に対し、厚労省の医薬局監視指導・麻薬対策課の担当者は次のような驚きの答弁をしたのです。
「薬機法における医薬品等の広告の監視指導につきましては、個別の広告全体としまして、①顧客を誘引する意図、②特定薬品等の商品名が明らかにされている、③一般人が認知できる状態である、いま申し上げました三つのいずれの要件も満たす場合に、規制対象となる広告として監視指導取り締まりを行っているところでございます。今回いただきましたポスター、私ども厚生労働省担当課で確認いたしましたところ、特定の製品名を明らかにしているものではなく、現行の薬機法の法規制として取り締まることができない、そういうものであると認識をしております。」
つまり、薬機法が規制の対象とする広告というためには、特定の商品名が明らかにされていることが必要だが、問題のポスターには特定の商品名がないので、規制対象とはならないというのです。
品位を損なう広告
厚生労働省の医薬品等適正広告基準では、医薬品等の品位を損なう広告が禁止されていますが、「無料接種期限迫る!」「マジで自腹になっちゃう」「いまだけ無料」といった記載が品位を損なうことは明らかです。委員からも批判的な声が上がっていましたが、これらも厚労省の立場では、「広告」でないから取り締まれないという論法になります。
商品名がないから取り締まれないというが、商品名は明記されている
しかし、富山県医師会のリーフレットには、接種スケジュールを示した部分に「サーバリックス」「ガーダシル」「シルガード」という製品名が明記されています。
商品名がないから、規制対象とならないというのは、明らかな間違いです。
富山県医師会のリーフレットの一部
また、東京産婦人科医会のポスターには接種スケジュールのところに、はっきりと「9価ワクチン」という表記があります。日本で承認されているHPVワクチンで9価ワクチンはMSDの「シルガード9」だけです。
東京産婦人科医会のポスターの一部
広告を読む者には、シルガード9だと分かり、つまり特定されています。
9価としか記載していないから規制対象ではないという厚労省の回答は、薬機法の広告規制の趣旨に反する解釈であり誤っています。少なくとも脱法行為を認める回答です。
自己決定権の保障と薬機法の趣旨
以上の点について、佐藤嗣道委員や花井十伍委員からも問題であるという指摘があり、磯部哲委員長は、こうしたポスターの表現は、ワクチンの必要性やリスクをよく理解したうえで対象者自ら接種を判断する「意思決定の環境として望ましくない」と指摘。厚労省に対し「薬機法の趣旨に反していないか」という観点に立った判断を求めたと報じられています。
厚労省に、国民に正しい情報が提供されるように指導しようという姿勢が欠如していることが情けない限りです。
当会議では、この問題を引き続き追及していきたいと思います。