『恫喝文書』の開示と交渉記録の情報公開請求
3月27日公開の当ブログ記事「MSD『恫喝』文書情報公開請求【続報】」では、MSDが厚生労働省に提出していた『恫喝文書』が全面的に開示されたことをお伝えしましたが、その記事でもご紹介したとおり、『恫喝文書』には次の事実が記載されていました。
- MSDが、2021年4月20日に行われた三原じゅん子厚生労働副大臣(当時)との面談において、積極的勧奨の再開とその後のキャッチアップ接種に必要な4価HPVワクチン(ガーダシル)の確保にかかる要請を受けていたこと。
- 後日、厚生労働省健康局予防接種室からも、積極的勧奨・キャッチアップの実施ともに、2021年10月の積極的勧奨再開と、2022年4月より前のキャッチアップ開始を含め、2022年度の始期以前に実施する場合にも支障のないよう可能な限りの数量の4価HPVワクチン(ガーダシル)を確保することの要請について書面での連絡を受けていたこと。
このように、厚生労働省とMSDが積極的勧奨再開とキャッチアップ接種実施を前提としたHPVワクチンの確保について交渉を行っていた事実が明らかとなったことから、当会議は、2025年3月19日に、①の三原じゅん子副大臣とMSDとの面談記録、②の厚生労働省健康局予防接種室がMSDに対してガーダシルの確保を要請した書面など、厚労省とMSDの交渉経過を記録した文書の情報公開請求を行っていました。
交渉記録の開示
この請求に対して、2つの文書が開示されました(実際の開示文書は当会議トピック「MSD『恫喝』文書問題-交渉経過に関する文書が開示されました」からダウンロードできます)。
1つは、MSDが厚生労働省健康局予防接種室長に宛てて提出した、2021年4月22日の予防接種室との面談で要請されたとする内容をまとめた文書。
もう一つは、この書面を受けて予防接種室長がMSDに回答した、ワクチンの確保についての要請内容を確認した文書で、前記②の文書に該当します。
開示決定への疑問-本当に記録はこれだけか?
開示された2つの文書が示す交渉経過の問題点についてはあらためて記事を書こうと思いますが、そもそも今回の開示決定には、「本当にMSDとの交渉経過を記録した文書はこれだけなのか?」という疑問があります。
当会議が情報公開請求で公開を求めた文書は、以下の文書でした。
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1.2021年4月20日に行われた三原じゅん子副大臣(当時)とMSD株式会社との面談の内容を記録した文書。
2.2020年4月から2022年3月までに行われた、以下の事項に関するMSD株式会社との交渉経過を記録した文書(以下の事項に関して交付しまたは受領した文書を含む)。
① HPVワクチンの積極的接種勧奨の再開
② HPVワクチンのキャッチアップ接種の実施
③ 日本向けのHPVワクチン(ガーダシル、シルガード9)の数量の確保
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このように、当会議は、積極的勧奨再開の前の2年間における、MSDとの交渉を記録した文書の全てを公開するよう求めていました。
行政文書の作成と管理について定めた「行政文書の管理に関するガイドライン」には次のような記載があります。
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第3 作成
1 文書主義の原則
職員は、文書管理者の指示に従い、法第4条の規定に基づき、法第1条の目的の達成に資するため、○○省における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに○○省の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない。
3 適切・効率的な文書作成
(2) ○○省の外部の者との打合せ等の記録の作成に当たっては、○○省の出席者による確認を経るとともに、可能な限り、当該打合せ等の相手方(以下「相手方」という。)の発言部分等についても、相手方による確認等により、正確性の確保を期するものとする。ただし、相手方の発言部分等について記録を確定し難い場合は、その旨を判別できるように記載するものとする。
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このようなガイドラインの記載からすれば、少なくとも2021年4月20日に行われた三原副大臣とMSDとの面談や4月22日の予防接種室とMSDとの面談については、厚生労働省において面談記録が作成されていてしかるべきですし、その後2022年4月の積極的勧奨再開/キャッチアップ接種開始までの間に、厚生労働省とMSDとの間でなんの連絡もなかったということは考えられません。
同じく省庁と民間との交渉記録が情報公開請求された事例として今話題の『森友文書』では、開示された文書に財務省と森友学園との交渉経過が生々しく記録されていたことが報じられています。厚生労働省とMSDとの交渉についても同様の記録が残されていると考えるのが自然でしょう。ワクチンの確保は、公衆衛生上の重要な課題であるとともに、製薬企業の利益にも大きく影響することであり、その決定過程には透明性が求められます。もし、ワクチンの確保に関する厚生労働省と製薬企業との交渉が記録も残さずに行われているとしたら、きわめて重大な問題です。
厚生労働省は、『恫喝文書』についても、当初は文書が存在しないという嘘の不開示決定を行っていました。今回の厚生労働省とMSDとの交渉経過に関する文書についても、さらなる文書の開示を求めていきたいと考えています。