HPVワクチンの接種を推進したい人たちの主張に、このワクチンは「メディアが副反応について過剰に報道したので国が接種勧奨の中止に追い込まれた」というものがあります。
しかし真実は違います。新聞記事や放送の実績をキーワードで横断検索できる「G-search」というサイトを使って、「子宮頸がんワクチン」「子宮頸がん予防ワクチン」「HPVワクチン」という言葉と、「副作用」「副反応」というキーワードの組み合わせで、検索をしてみました。
その結果、このワクチン特有の深刻な副反応についての報道は、ワクチン販売開始の2009年以降、2013年2月まではほぼゼロでした。記事本文中に「副作用」「副反応」という言葉が使われていても、それはむしろ「効果が高く副作用が少ない」という文脈で使われた報道ばかりでした。
はじめての報道以降も、メディアが過熱することはなかった
そして2013年3月8日になって初めて、朝日新聞とフジテレビが、東京・杉並区の重篤な副反応被害者に、区が独自の補償を約束したというニュースを報道しました。これが、HPVワクチンで深刻で多様な副反応症状が起こり得るということを世の中に広く知らしめた最初の報道だったのです。とはいえ、朝日新聞の全国版に載ったのは小さな記事であり、テレビもニュースではなく、ワイドショーでの放送が単発で行われただけでした。
ではこれをきっかけにメディアは「副反応について過剰に報道」したのでしょうか。
違います。当時の報道の推移を知るために、新聞57紙*1の記事本数をグラフにしてみました(図1)。

図1「子宮頸がん(予防)ワクチン+副反応」「子宮頸がん(予防)ワクチン+副作用」の新聞記事の日別本数*2
これを見ていただけばわかりますが、重篤な副反応について初報道が行われた3月以降、積極的接種勧奨中止が決まる6月14日までの間は、散発的な報道が行われていただけです。
記事の本数が少し増えているところを見ると、
そして5月17日頃にも小さなピークがありますが、これは厚労省
”国の方針転換”の直後から記事が急激に増加
そして2013年6月14日に第2回副反応検討部会が開かれ、その場で「積極的接種勧奨の中止」が決まりました。“国の方針転換”が明確になったわけです。
すると新聞の「副作用」「副反応」に関する記事本数はこの日を境に急激に増えました。副反応被害者の映像がテレビで何度も報道されたのは、この“国の方針転換”以降のことです。
つまり「副反応についてメディアが報道した」から「国が接種勧奨中止に追い込まれた」のではなく、「国が接種勧奨中止を決定した」から「副反応についての詳細な報道が繰り返された」のです。順番がまったく逆だったのです。
メディア自身が事実を掘り起こし、国やその道の権威が言っていることと違う真実を報じるにはたいへんな努力とエネルギー、勇気が必要です。一方で、国が発表したことをそのまま報じるのは極めて簡単、「~がこう決めた」「~がこう発表した」と書くだけでいいからです。国の方針転換後に「副作用」「副反応」についての記事本数が急増したのは、こうしたことが背景にあります。
メディアが過剰に報道したので副反応疑い報告が増えた、というのも事実ではない
また推進する人たちの中には「メディアが副反応について過剰に報道したので、そのニュースを見て保護者の不安が増加し、副反応疑い報告が急増した」という言説もあります。中には被害者の訴えた症状を「テレビの動画を真似したものじゃないか」と中傷する医師もいたくらいです。
しかしそれもまったく事実ではありません。図2のグラフはHPVワクチン発売開始後に開催された厚労省の審議会での重篤な副反応疑い報告件数の月平均値です。

図2 厚労省の審議会に報告された重篤副反応歌い報告件数(調査対象期間が会議毎に異なっているため、報告数÷調査期間月数=月平均値とした)
これを見ますと、“国の方針転換”が決まって、深刻な副反応について多数報道されるようになった2013年6月よりずっと前に、多数の重篤副反応疑い報告が上がっていたことがわかります。
月平均値では2011年末頃がピーク。前年に国が開始した「ワクチン接種緊急促進事業」でHPVワクチンが無料化され、接種者が急増した後のことです。
10年以上前のメディアの報道ぶりはどうだったのか、正確に記憶している人はほとんどいないと思います。それをいいことに、HPVワクチンを推進したい人たちは「メディアの影響で国が方針転換をした」「報道の影響で副反応疑い報告が増えた」という事実に反する宣伝をしています。
しかし記事本数記録はウソをつきません。ぜひ皆さんはその真実を知ってください。
*1:G-searchによる検索対象57紙
朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、北海道新聞、河北新報、東京新聞、新潟日報、中日新聞、神戸新聞、中国新聞、西日本新聞、東奥日報、岩手日報、秋田魁新報、山形新聞、福島民報、福島民友新聞、茨城新聞、下野新聞、上毛新聞、埼玉新聞、千葉日報、神奈川新聞、北日本新聞、北國新聞、富山新聞、福井新聞、山梨日日新聞、信濃毎日新聞、岐阜新聞、静岡新聞、伊豆新聞、京都新聞、大阪日日新聞、日本海新聞、山陰中央新報、山陽新聞、徳島新聞、四国新聞、愛媛新聞、高知新聞、佐賀新聞、長崎新聞、熊本日日新聞、大分合同、宮崎日日新聞、南日本新聞、琉球新報、沖縄タイムス、公明新聞、しんぶん赤旗、日刊スポーツ、スポーツニッポン、スポーツ報知、サンケイスポーツ、デイリースポーツ
*2:*1に同じ