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【注目情報】世界医師会の「医の国際倫理綱領」最新版がまとめあげられた

原文

The international code of medical ethics of World Medical Association

(世界医師会の「医の国際倫理綱領」)

JAMA Published online October 13, 2022 (フリーオープンアクセス)

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2797507

JAMA. 2022;328(20):2018-2021. doi:10.1001/jama.2022.19697

要旨

 世界医師会(World Medical Association:WMA) の「医の国際倫理綱領(International Code of Medical Ethics:ICoME)」が16年ぶりに大幅に改訂され、2022年10月、WMA総会で全会一致で採択された。

世界医師会(WMA)の中心的使命の一つは、医療専門職の倫理的実践を可能な限り高い水準で確保することである。1947年、医学倫理の原則に対する最も重大な違反の余波を受けて設立されて以来、世界の医療従事者に倫理や指針を提供するために、包括的な宣言、決議、声明を採択してきた。それらの中核をなす文書が、「ジュネーブ宣言 (医師の誓い)」、医学研究に関する「ヘルシンキ宣言」、そして医療専門職の倫理原則と義務を明らかにした「医の国際倫理綱領」の3つの指針である。

3つ目の「医の国際倫理綱領」は、おそらく現時点ではもっとも知名度が低い中核的文書である。1949年に「ジュネーブ宣言 (医師の誓い)」に続いて採択され、医療専門職の倫理原則と職務上の義務を概説している。

第1項で、医師の義務は個々の患者の健康と福祉の促進であり、適切な医療行為と医師のプロフェッショナリズムに従って適格で、時宜にかなった 、思いやりのあるケアを提供することとし、さらに、「人間の生命と尊厳、患者の自律性と権利を最大限に尊重して医療を提供しなければ,ならない」と、医師の第一義的義務と基本姿勢を明確にしている。

続いて、「医師は、年齢、疾病または障がい、信条 (creed)、民族的出自、社会的文化的に形成された性別 (gender)、国籍、政治的所属、人種、文化、性的指向、社会的立場、その他の要因による偏見や差別的行為に関わることなく」と、公正かつ公平な医療の実践について踏み込んで記述している。

また、利益相反について、医師は自分自身や所属する医療機関の利益に影響され、判断を曇らせてはならない。医師はリアルなまた可能性のある利益相反を認識し、避けねばならない。そうした利益相反が避けがたいところでは、進んで申告して適切に管理せねばならないと明記している。

マーケティングに関連して、「医師は、押しつけがましい、あるいは不適切な広告やマーケティングを控え、医師が広告やマーケティングで使用するすべての情報が事実に基づいており、誤解を招くものでないことを確認しなければならない」と記している。

新たに設けられた‘社会に対する義務’においては、医師は健康教育や健康リテラシーにおいて重要な役割を担っており、この責任を果たすために、発言が科学に基づき正確で理解可能であることを求めている。また、「WMAヘルシンキ宣言とWMA台北宣言に則り、健全な医学科学研究を支援しなければならない」と健全な研究への支援についても触れている。

医師は、変化する臨床、政治、法律、市場の力によってもたらされ、悪化する前例のない課題に直面している。同時に、医療専門職は世界規模でダイナミックに相互に結びついてきており、医の国際倫理綱領に反映されている医療倫理の基本的かつ普遍的な原則を再確認することがますます重要になっている。

当会議コメント

本綱領は、医学医療のプロフェッショナルとしての倫理実践のあり方を示す基本指針である。今回の改定では利益相反やマーケティングについても踏み込んだ内容が明記され、独立した専門職としての判断について記載が強化されている。

薬害防止に関連しては、今回の改定で、利益相反 (5項、6項、25項)、発信情報の科学性 (24項、35項) に関し、現在の状況のなかで意義の大きい条項が加わっている。

医療における科学技術の急速な変化と世界規模でのマーケティングが進む中、「医の国際倫理綱領」で明確化されている医療倫理の基本的かつ普遍的な原則を再確認することがますます重要になっている。

医師のみならず、すべての医療従事者は、患者の尊厳と権利、自律性を尊重し、公正かつ公平な医療技術を提供する自律性・専門性・倫理性をより一層高めなければならないことを確認したい。(N.M)

関連サイト

世界医師会 (WMA)「医の国際倫理綱領」

www.wma.net

 

日本医師会「医の国際倫理綱領」

(2023年1月24日時点で「WMA医の国際倫理綱領 英文および和文」には2006年の前回改定版の英文と和訳が掲載されている。2022年10月改定版の和訳は未掲載)

 

 med.or.jp